私史上初

彼女は、職場で打ちのめされる出来事に遭遇した。

どうしようもない憤りの中で、
ふと、柔軟性のない自分の考えに気づいた。

今まで正しいと思っていた事は、
どうやら違う事もあるらしい

今まで見えていた視界以外にも、
どうやら違う景色があるらしい。

小さい箱の中に、
知らずに入っていた自分がそこに居た。

 

そこに気付いた彼女は、
私史上初の事に、沢山TRYしてみる。

キライだったスポーツ観戦もしてみた。
趣味じゃないタイプのファッションにもチャレンジしてみた。
普段はしない料理も、出来る範囲で挑戦してみた。

人からくだらないと言われることも、
とりあえず試してみた。

知らない土地にも行ってみた。

キライが好きになったものもあるし、
経験の幅が広がることで、心にはゆとりがでてきた。

 

「それでね！私史上最大の発見をしたんですよ！」
こちらをまっすぐ見つめて、嬉しそうな顔で言った。

「上を向いて、泣き続けることは出来ないし、
高みから街を見おろして、悩みが大きくなることはない。ってこと」

仰るとおりだと思った。