少し遅れた卒業写真

 

 

数年前まで

政治が良くないから
会社がこうだから
妻のせいで
親がこんなんだから

彼はそんな言葉を、
呪文の様に繰り返していた。

 

そして、
あるとても辛い出来事が、彼のもとに起きた時、
彼は自分の意識を、変えなければならないと真剣に感じた。

他人にネガティブな焦点を当てるのでなく、
今の自分が出来る事は？と自分自身に疑問を投げかけ、
それを実行する様に心がけていった。

長年積み重ねた癖なので、
ついネガティブになったり、誰かを批評してしまうが、
その度に、何度も何度も意識しなおした。

そして徐々に、自分への投げかけが上手くなっていった。

いつの頃か、「誰かの為といいながら、人の良くない部分に焦点を当てる事は、その人をコントロールしようとする自分のエゴだったのですね」と素敵な気付きを口にしたことがあった。

急に大きな変化は起きないが、彼は徐々に周囲に対しての本当の感謝が持てるようになり、
その感謝が浸透し始め、目に見えるほどの人生の逆転劇が作られていった。

 

今日、PCに届いた一枚の写真。

そこには、彼と家族の笑顔があった。

投げやりになっていた職務は、
やる気で息を吹き返し

冷え切っていた夫婦は、
再び春の訪れを迎えている様子だった。

 

件名には、
「私の卒業写真です」と書かれていた。

十分すぎる単位を取得して、
彼は次のステージへ、向かわれるのでしょう。