イメージする

 

「お墓まで、持っていくつもりでした」

少し間を置いて、
彼女は、今まで心の奥底にしまっておいたものを、
ひとつひとつ、テーブルに並べ始めた。

小さな頃から、
誰にも話せなかった自分の歴史。

自分自身が汚れていると、
思い続けていた自分の感情。

年齢と共に、
増えていく様々な役割。

才能を開花させたゆえに
多くの人に視線を向けられる、本当の自分との違和感。

淡々と言葉を発しながら、
それらの背負ってきたものを、並べていった。

今まで自分を守り続けていた
淡々とした言葉は、落ちてくる涙に気づくこともなく、

重過ぎた気持ちが、やっと流れていくのを、
拭おうとすることも出来なかった。

心の窓を開け放って、空気の入れ替えをしたことで、
背負ってきた役割のありがたさも感じることができた。

そして、テーブルの上に並べた荷物を、
もう一度背負いなおし、

少し高めのパンプスは、駅名が灯る地下鉄の階段へ消えていった。

 

 

その後、久し振りの彼女から、
元気いっぱいの連絡をいただいた。

彼女の生活が、
今までと表面的に何かが変わったわけではない。

ただ、自分の心を全て一旦並べた日から、
彼女の目に映るものは、それまでよりも鮮やかなものに変化をしていた。

「自分を生きるって、こういうことなんだと実感しました」
そう伝えてくれた事が、何より嬉しかった。

 

傘もあるし長靴もある エアコンもあって毛布もある

竹内 嘉浩
竹内 嘉浩株式会社呉竹(くれたけ心理相談室、呉竹コンサルティングサービス)
今日も一日おたのしみさまでした。

このブロブは、皆さんとのコミュニケーションを図りたいと思い更新いたしております。以前より頻度が少なくなりましたが、また参ります。

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