ありがとうを言わなかった彼女

ウェイトレスは、向かい側に置いてあったフォークとナイフと、氷の解けてしまったグラスを、そそくさと片付けた。

男は、さっきまで向かい側に座っていた人との、出会いからの日々を回想しながら、ひとりのテーブルで食事を続けた。

もし、彼女がここに居続け、「今までありがとう」という言葉を聞いていたら、男は彼女への思いを、残してしまったかもしれない。

何も言わない向かい側の椅子に「ありがとう」を告げた。

そして、テーブルチェックを済ませ、男は店の外に出た。

待てよ・・・男は、少し微笑みながら、彼女の名前を確認しボタンを押す。「こちらはNTTドコモです。おかけになった・・・」

予感は的中した。男の微笑みは、さわやかな笑みに変わった。居留守でもなく、着信拒否でも無い、そんな彼女の優しさに、今まで愛したその人を誇りに思った。

８月も終わりに近づき、涼しくなった夜に、何となく心地よさを感じていた。

竹内嘉浩株式会社呉竹（くれたけ心理相談室、呉竹コンサルティングサービス）

今日も一日おたのしみさまでした。

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There is no time like the present.

“ありがとうを言わなかった彼女” に対して3件のコメントがあります。

hyutamama より:

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小説を読んでるようです。
１つ前のおはなしも( ´艸｀)
自身の誕生日には「母」にありがとう！って
伝えたく想い、今回は素敵な女性になりたいって、思いました。
オッサンな私ですが・・・
いろんな想いは熱いです(●´ω｀●)ゞ

yume より:

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本当に色々な愛情がありますね＾＾*
でも、それらのことを優しさ・・とお互いが理解し合えるほど、愛し合っていたのですね＾＾*
別れた後にも、そんな爽やかな想いができるほど、相手を愛せるって素敵ですね＾＾*

キラキラより:

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　なんか深い。想像してみたんだけど。優しさなんだ´∩｀その日、喫茶店には彼女は現れなかったってこと？一度回想していた男性の立場になったことがあったけど、それが優しさってその時は気付けなかったな。今となれば…だけど。