食卓を囲んで、自分の意にそぐわない事をすると、
声を荒げて、娘に手を挙げた父親がいた。
父親同様に、平手で殴る母親もいた。
そんな両親に育てられた娘は、
幼き頃から、いつも何かに怯えていた。
金銭的には恵まれたな家庭であったが、
彼女の心はいつも飢えていた。
そして、その飢えや寂しさを感じないように、
硬い硬い氷のバリアを、自分を守るために作っていった。
人に心を見せる事は、彼女にとって恐怖となった。
そして、ようやく心を開ける、
一人の友達との出会った。
彼女の心が、固い氷をようやく溶かし始めた時、
皮肉な事に、その友達は自らの命を絶ってしまう。
彼女が本音を語れる相手は、完全にいなくなった。
結婚をしても、子供が出来ても、
人を愛する表現は、変わる事無く出来ないままであった。
そして、数十年を経て、
あるひとつの大きな転機によって、本当の自分を表現し始める事になる。
その転機は、マイナスの出来事。
それが、彼女の心を呼び覚ます事になる。
生まれた頃に記憶していた、かすかな愛を感じながら、
彼女は自身の階段を、自らの意志で歩き始めた。
そして春の訪れの様に、
数十年に渡って固まっていた心が、
ゆっくりと、ゆっくりと溶けていった。
いつかこの時が訪れる事を、
彼女は心の何処かで、信じていたのだろう。
そしてこれからが、本当の人生の始まり。
予行練習を積んだ分、今感じている大きな幸福感を、
これから先も感じ続けてていくのだろう。
少し早い春の訪れを、彼女は僕に見せてくれた。
いつも幸せを願っています
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今日も一日おたのしみさまでした。
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